私はライカM11で撮影しながら旧東海道を歩いている。
高精細な描写と爆速オートフォーカスのキヤノンEOS R5や、スナップシューターとして多くのカメラファンに評価されるリコーGRⅢも所有しているが、旧東海道を歩くときには迷わずライカM11だけを持っていき、撮影を堪能している。
なぜ、ライカM11なのかは以前の記事で書いたが、レンジファインダーによるピント合わせがとても楽しく、エモーショナルでノスタルジーなライカJPEGの描写が大好きだからだ。
そんなライカM11は2024年に購入した、私のファーストライカになる。
今回は当時のことを思い出しながら、ライカM11の購入記を書いていきたいと思う。
M型ライカが欲しい

私は2002年ごろに初めて一眼レフのキヤノンEOS 7を購入し、たまにサーキットでモータースポーツ撮影をしていた。
本格的にカメラを楽しむようになったのは2012年にキヤノンEOS 60Dを購入してからで、以来、キヤノンEOS 7D MarkⅡ→ キヤノンEOS 5D MarkⅣ → ソニーα7R Ⅳ → キヤノンEOS R5と機種を変え、レーシングマシンの流し撮りを楽しんだ。
同時に2019年からリコーGRⅢが加わり、それからはスナップの楽しさも知り、途中から実装されたイメージコントロールのネガフィルム調の懐かしい描写にハマり撮りまくった。
しかし、これはあくまでもデジタルをフィルム調に変換した、いわゆるニセモノ。ならば本物のフィルムはどうかと思っていた矢先に、カメラ店の棚にいにしえの名機ローライ35が置かれていたので購入した。
ホンモノのフィルムカメラの絵は、温かみのある懐かしい雰囲気だった。
また、ローライ35は距離計も搭載しなく露出も完全マニュアルということで、目測で被写体との距離を合わせ露出を合わせて、という所作が写真を撮ってるぞい、という気持ちになりとても楽しく思えた。
ただ、今はフィルムは現像代が高く、1枚あたりのコストパフォーマンスが悪すぎ。たくさん撮って上手くなりたいのに、これじゃシャッターを切る指がイップスになりそうだ。
やっぱりデジタルかなあ。
そんなときに目に止まったのがデジタルM型ライカで撮られた写真だった。
デジタルを雰囲気だけフィルム調にした軽いものではなく、陰影が強く出た懐かしく深みのある印象的な写真に魅了され、M型ライカに強く興味を持ったのだった。
また、M型ライカは1954年の登場から70年以上もの長きに渡りレンジファインダーによるマニュアルピント合わせの機構を踏襲しており、写真を撮る儀式を楽しめそうなことも興味を持つ理由の一つだった。
M型ライカが欲しい・・・。
ただ、M型ライカは自動車界で例えるとフェラーリのような存在で、ブランドという名の恐ろしいほどの付加価値が付く。カメラが好き、ライカに興味があるというだけでは手を出せないのが、M型ライカなのだ。
そんなM型ライカだが、それでも深く興味を持った私は、ライカM6を所有する某会社の社長にお願いして、触らせていただくことにした。
社長の会社を訪問して、早々専用ケースから取り出してもらう。
金属の塊のような削り出しボディがなんとも美しい・・・これがM型ライカか!
それまで所有していたカメラは丸く柔らかみのあるデザインでボタンが多く配置されていたが、M型ライカはボタンが極限まで減らされ、角張った重厚な佇まいは気品に満ちていた。
今まで持っていたカメラとはまったく違うこのカメラが欲しい・・・。
そして恐る恐る手を伸ばし、ファインダーを除く。
すでにEVFに見慣れた私の眼が、素通しのファインダーに驚く。一眼レフ以来? いや、ガラスを何枚も通す一眼レフなど比べように無いくらいのクリアなライカM6のファインダーは実に新鮮だった。
そのクリアなファインダーを覗きながら、程よいトルク感があるピントリングを回して慎重に二重像を合わせる。70年を超えるレンジファインダーのピント合わせの儀式は実に楽しい。
そしてシャッターを切ると、コトッと控えめで耳触りの良い音がした。イイぞ、凄くイイ音だ!
短くも濃密なM型ライカ初体験で、私は完全に購入モードに突入した。
M11に決めた理由

購入を決めたM型ライカだが、1954年から続くライカのMシリーズは様々なモデルが存在する。
まず決めなければいけないのがデジタル機かフィルム機か。中古品はもちろんのこと、新品でもフィルム機が3種類もラインナップされているのがM型ライカなのだ。
だが前述した通り、フィルム機は現像代が高く購入後の運用コストが莫大で、むやみにシャッターを切れない。1台目のM型ライカはレンジファインダーの機構に慣れるためにたくさん撮りたいので、デジタル機を購入することにした。
2024年当時、デジタル機はM11系のみが新品で購入できるのだが、中古品も含めて検討しているので、歴代デジタル機の仕様と特徴を簡単に書いてみる(派生機種除く)。
- M8:2006年発売 1010万画素CCDセンサー M型唯一のAPS-H
- M9:2009年発売 1850万画素CCDセンサー CCDセンサーで独特の描写
- Typ240:2013年発売 2400万画素CMOSセンサー M型唯一動画撮影可能
- M10:2017年発売 2400万画素CMOSセンサー(M10-Rは4000万画素) フィルム時代以来のコンパクトサイズ
- M11:2022年発売 6030万画素CMOSセンサー 超高画質でブラックはデジタル最軽量
デジタルが加わって20年近く経ち(2024年当時)、派生モデルを除いてもこれだけのラインナップが揃うM型ライカ。中古品も豊富なのでかなり迷うが、まずは消去法としよう。
M8はM型唯一のAPS-Hセンサーということで、市場に膨大に揃うMマウントレンズを隅々まで使い切ることができず、レンズの魅力が半減。焦点距離使えないのも残念なので却下とする。
M9はM型デジタルライカ初のフルサイズセンサーを搭載し、独特のCCDセンサーの描写がいかにもライカらしいと評判のモデルだが、センサー剥離の持病があると聞く。ライカマニアには相当な人気で市場に出ることが少なく、見つかったとしても値段は高く、故障が怖いのでファーストライカとしては避けるべきか。
Typ240は動画撮影が可能な唯一のM型ライカだが、私がライカに求めるのはスチルのみ。最新モデルに比べるとやや大きいらしく、コンパクトなM型ライカの魅力が半減するし、すでに10年以上が経過し故障が気になるところ。このモデルのみナンバーリングを廃しているので、なんか異色なM型ライカという気がするしなあ。
M10はフィルム時代のようなコンパクトサイズになり、かなり魅力的。さらに途中からラインナップされたM10-Rは4000万画素と、これからの高画質化にしっかり対応して、長く所有していても安心だ。
そしてM11はさらに画素数が上がり、6000万画素を突破。これならば広く撮影してクロップすることも可能になる。さらにM11は重量もデジタル最軽量(ブラック)。コンパクトで軽量なのはM型ライカの大きな魅力の一つなので、M11ならばその恩恵を十分に感じられそうだ。
ということで、ターゲットはM10-RかM11(ブラック)に。
そしてM10-RとM11の中古相場を比べてみると大きく違いがないため、M11に照準を絞った。
さて、ここまで中古品を見てきたが、新品はどうかと思い調べてみる・・・高っ!
当時の最新機はM 11-Pだが、その価格は1,518,000円※と中古品よりも30万円以上も高く、購入を予定しているマップカメラではポイントも付与されない。
※2024年当時 現在はさらに高い
ということで、M11の中古品を探すことにした。
大金を抱えてマップカメラへ

2024年10月24日。150万円もの現金を抱えて、東京新宿のマップカメラ本店へ向かう。
クレジットカードか銀行振込にしろって?
いや、カードは支払い制限を設定しているし、銀行振込じゃその日に持って帰れない。なので、あえて”ゲンナマ”をバッグに詰めて、銀行強盗した後の犯人のように周囲をキョロキョロ警戒しながら新幹線と山手線を乗り継ぎ、マップカメラに到着した。
ライカの販売店として有名なマップカメラだが、訪れてみると意外にも小さな店舗に拍子抜けするも、地下の専用フロアに入ると、高級感の漂う落ち着いた雰囲気にビビり散らかす。
円安の影響なのか客層は外国人が大半で、日本人の田舎者は場違いな雰囲気プンプン・・・。
だが、ライカを欲しいという気持ちはそれに勝り、気合を入れて店員さんに話しかける。
「すみません、ライカのど素人ですが、興味がありまして。いろいろ話を聴かせてください」
そしてM11の購入を検討している旨を伝えると、10台ものM11が居並ぶショーケースへ案内される。
美品、良品、並品とあり、値段は100万円から120万円を超えるものまで様々。中には美品の値段を超える良品も・・・。
今まで中古カメラを購入したことのないので、なぜ美品よりも良品が高いのかが分からない。質問すると、外観が美品に劣るので良品だが、不安な箇所をライカショップで新品部品に交換しているので、高くなるケースもあるのだとか。
クルマで例えると、外板は元のままだが、エンジンやトランスミッションなどを新品に載せ替えているということなのだろう。
そんなことを店員さんに聞きながら10台のM11を比べると、シャッターボタンのツヤや文字盤の黄ばみなど、かなり違いがあるものだ。同じ商品をたくさん抱えている店だからよく分かる。
その中で私が選んだ商品は、使用感のほぼ無い美品。人生でもそうはない100万円超えの買い物だが、マップカメラ店員さんの豊富な知識と完璧な説明で、あっけなく決めてしまい我ながら驚いた。
では支払いを、と思い、バッグから現金を取り出そうとすると、店員さんから、
「現在当社のサイトでは、ポイントキャンペーンを行なっているので、そちらから購入した方が断然お得です」
とのこと。
いま、今日持って帰りたいのです、と思うも、10万円以上のポイント差があるとのことなので、店員さんの目の前でスマホを操作して購入し、店を出たその足で銀行に行き振込し、それから数日間はライカM11のことだけを考えて待つのだった。
最後に

今回はライカM11の購入の理由を書いてみた。
この記事を書いている時点で、M11が私の元にやってきてから1年半が経過したが、撮ってよし、見て尚よしのこのカメラへの満足度は深まるばかり。この時、大きな決断をして本当に良かったと心から思っている。
ということで今回は以上。次回はこの続き。M11がやってきた時のことを書いた以前のブログ記事を再編集して掲載しようと思っているので、興味のある方はぜひご覧ください。

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